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はぐるま

歯車

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《歯車(はぐるま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,267 字 · 52 頁

青空文庫

同時に又復讐の神に追われたオレステスを考えない訣にも行かなかった。

僕は運河に沿いながら、暗い往来を歩いて行った。そのうちに或郊外にある養父母の家を思い出した。養父母は勿論僕の帰るのを待ち暮らしているのに違いなかった。恐らくは僕の子供たちも、――しかし僕はそこへ帰ると、おのずから僕を束縛してしまう或力を恐れずにはいられなかった。運河は波立った水の上に達磨船を一艘横づけにしていた。その又達磨船は船の底から薄い光を洩らしていた。そこにも何人かの男女の家族は生活しているのに違いなかった。やはり愛し合う為に憎み合いながら。……が、僕はもう一度戦闘的精神を呼び起し、ウイスキイの酔いを感じたまま、前のホテルへ帰ることにした。

僕は又机に向い、「メリメエの書簡集」を読みつづけた。それは又いつの間にか僕に生活力を与えていた。しかし僕は晩年のメリメエの新教徒になっていたことを知ると、俄かに仮面のかげにあるメリメエの顔を感じ出した。彼もまたやはり僕等のように暗の中を歩いている一人だった。暗の中を?――「暗夜行路」はこう云う僕には恐しい本に変りはじめた。僕は憂鬱を忘れる為に「アナトオル・フランスの対話集」