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しとはなししたひと

死と話した人

小川 未明

線上閱讀小川 未明《死と話した人(しとはなししたひと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 2,429 字 · 5 頁

青空文庫

生きているという意識は、死の恐れを深く知るものにだけ、それだけありがたいのだ。夜がなかったら、太陽の輝きはわかるまい。この二つは、自然の大きな力なんだ。」と、Aはいいました。

「あの男は、この自然の力について考えただろうか。」

彼は、そんなことも思いました。

だれか、外の戸にさわったようなけはいがします。Aは立ち上がって、出口の戸を開けてみました。すると、そこに、頭から、黒い着物をかぶった脊の高いものが立っているので、びっくりしました。

「おまえは、だれだ?」

「死だ! この家へはいろうかとのぞいていたのだ。俺のことを話したのも、みんな聞いた。」

Aの心臓は、氷の手で、ぐっと握られたように、ぞっとして、ものがいえなく、ふるえていました。

「しかし、おまえたちは、俺の存在を忘れないだけ感心だ。こんどだけは、はいるまい。」

こう、死は、冷ややかにいい放って、大またで歩いて去りました。

空には、こぼれ落ちそうに、星がきらきらとして、低くささやきながら、風が吹いていました。

――一九二八・一〇作――