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じゅんし
殉死
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《殉死(じゅんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,737 字 · 21 頁
――いったいどういうわけなのか。主馬は唱名しながらもそのことが胸につかえてしかたがなかった。
宵がすぎると冷えがきびしくなってきた。この備後のくに三次はまわりを山にかこまれているし、山陰国境からふきおろしてくる雪まじりの風は骨までとおる凛烈なものである。主馬は三次の冬はこれがはじめてだった、かれは江戸家老をつとめる八島主計の二男で、ずっと江戸屋敷のつとめだったが、去年の春ごしゅくんのおぼしめしで初めて国許へお供をして来た。幼年からおそばに仕え、「くにもとでは福尾庄兵衛、江戸では八島主馬」といわれるほど篤い寵をうけていた。だからいまごしゅくんの逝去にあったかれには、はじめてきびしい山ぐにの冬がひとしお身にしみるように思えるのであった。「たいそう冷えます、笑止ながらおしのぎにはなろうかと存じまして」家扶がそう云って、温めた桑酒をはこんできたのはもう九時に近い頃だった。みんなよろこんで杯をとった、けれどそれでも座を立とうとはしない、火桶のそばへにじり寄って言葉もなく主馬のようすを見まもっていた。――ぜんたいこれはどういう意味なのか、またしても考えがそこへもどったとき、ようやく主馬に思いあたることがあった。