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のこされたるえど
残されたる江戸
柴田 流星
線上閱讀柴田 流星《残されたる江戸(のこされたるえど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,677 字 · 80 頁
行いて聞くには汐入の渡しを綾瀬の流れに入って、溯ることしばし、そこに月影の砕くる瀬ありて、彼の愛すべき声を賞すべし。半宵船をもやいて、ここらあたりに月と河鹿を賞するの風雅人、果して都に幾たりを算え得ることであろうか。
走り鮎
鮎は当歳の走りを別して賞美する事、必ずしも江戸ッ児ならずともだが、今では蕃殖を保護するというので、七月十五日までは禁漁とあり、旁名物の多摩川ものはそれ以後でなくば魚河岸にも現れず、二子に赴いても網一つ打つことならねば、江戸ッ児には酷い辛抱ながら、解禁の日よりは河岸にも籠をつむことあり、それまで幅を利かしていた秩父もの、国府津ものなど、漸く片隅に退けられて、これより一しきり、鮎は多摩川に限らるるもおかしい。
凡そ鮎の真味は、その肉よりも骨にあるので、噛みしむる口に芳脂の舌ざわり快く、歯に何の骨折り一つさせぬようなを殊に好しとしてある。さるは江戸ッ児の産湯する多摩川の水に産するを随一とし、秩父の渓流に育つも味は劣れりというではないが、多摩川のに比して骨の硬いが難だ。国府津ものは酒匂川にとれるを一番の上味とし、山北の鮎鮨で東海道を上下するほどの人々は予て馴染だが、これとても骨は硬い。