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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

線上閱讀石川 欣一《比島投降記(ひとうとうこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,333 字 · 134 頁

青空文庫

午後遅く颱風警報が出るとともに、G中尉は、今晩中に病院を移転しようと決心した。丁度、颱風のピークが、この地区を通過するのが深夜で、それが同時に満潮にあたる。愚図愚図していると、病院が流されてしまうかも知れないのである。それで、晩飯が終ると、トラックが続々とやって来た。正面は波が打込んで通れないので、裏の方の鉄線を切って出入口をつくり、まず婦女子をはこび出し、次に担送患者と独歩患者とをはこんだ。吹き降りの夜、僅かな懐中電灯とヘッドライトとで行うこの作業は、病人相手であるだけに、ある程度の混雑を伴ったが、みんな一生懸命にやったので、二時間で片づき、最後にG中尉と僕とが、構内くまなく見廻って異状なきを確かめ、それで海岸の病院は閉鎖になった。

移転さきは、同じアパリの海岸だが、自然か人工か、高さ二間ほどの堤防があるので、海は見えず、もちろん波が打込むというような危険はない。

それのみか、前の敷地が、草のまるで生えていない砂地で――防風みたいな草が若干あったが食って見たら苦かった――風が吹くとこまかい砂が食器やコットの中に舞いこんで弱ったが、今度の場所は草地でしかも水はけがよく、この点めぐまれた。