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ひかくしんわがく

比較神話学

高木 敏雄

線上閱讀高木 敏雄《比較神話学(ひかくしんわがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,624 字 · 348 頁

青空文庫

南洋説話既に、この人格化の形跡を示す。説話の英雄ウフラカニヤナは、前に述べし如く、兎の人格化にして、其敵者たる此青年英雄の叔父なる鬼は、獅子の人格化したる者なり。兎の獅子の尾を柱と、屋根とに結びつけて、之を苦しめしと同じく、ウフラカニヤナは鬼の髪を屋根に結びて、その敵を苦しめたり。大国主ノ神が大神の髪を、室屋の橡に結びし一条と、かの一条との間に、果して幾何の相違ありや。

所謂稲羽の兎の説話は、兎の鰐を欺きしを語る。鰐は元来、南洋地方或は熱帯地方の動物にして、日本近海の魚族に非ず。獅子の生存せざる、欧羅巴の動物説話に、此動物の現わるるは、その起原の印度なるを示すものとせば、同様の理由によりて、日本説話に鰐の見ゆるは、其南方起原を証明する者には非ざるや。動物説話を外にして、日本古代の説話は、鰐に就て語ること甚だ多し。之れ恐らく、偶然には非ざる可し。但し日本民族の南方起原説に至りては、今日に於て尚一個の疑問たるに過ぎず。

稲羽の兎の一段は其結構に於て、決して単純なるものに非ず。思うに、其はじめは、単に小にして智なる兎の、大にして愚なる鰐を、巧みに欺きしを語りて、智力の勝利を説きし者なる可く、後に至りて道徳的趣味を加えて、鰐を欺きし兎の罸せられし一条を、附加せしならん。