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ひょうがきのかいじん
氷河期の怪人
海野 十三
線上閱讀海野 十三《氷河期の怪人(ひょうがきのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,321 字 · 15 頁
怪人は先に立って、たくみに氷の崖をおりていった。ときには、道彦をだいてくれたりした。
「ほら、もう、ここからだって、見えるのだ。あの谷底を見たまえ。わしのからだの形がのこっているじゃないか」
「どこ?」
「ほら、この指の先を見たまえ」
道彦は、怪人の指す方を見た。どこだかよくわからない。岩かどをにぎっている指先が凍りついて痛くなった。その痛みは、指先から全身へひろがっていった。やがて、頭がきりきり痛み、そして耳ががんがん鳴りだした。目が見えなくなった。
(あっ、あぶない!)
と、道彦は、根かぎりに叫んだ。
「おい、どうした。道彦!」
彼の名をよぶものがある。
はっと思って、道彦は眼をあいた。すると、そばに、木谷博士の顔が、にこにこと、彼をのぞきこんでいた。
「お前が、あまりうなされているものだからなあ。なにか夢を見ていたね」
夢? 気がつくと、飛行機は、エンジンの音もすこぶる快調に、おだやかに飛んでいるではないか。
「先生、これは何号ですか」
「何号? ヤヨイ号じゃないか」
「ああ、やっぱりヤヨイ号か。――ああ、よかった」
「なにが、よかったって」
博士にきかれて、やむなく道彦は、ヤヨイ号の遭難のことや、氷河期の怪人があらわれたことなどを話した。