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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

線上閱讀三遊亭 金馬《江戸前の釣り(えどまえのつり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,910 字 · 214 頁

青空文庫

「おまえたちはよくくわれないな、おじさんなどはこのとおりだ」

とブヨに刺されたところを見せると、「おじさん、これをつけてごらん」といって、草餅に入れたりモグサにしたりするヨモギをとってきた。葉をもんで絞った汁をつけると、かゆみがとまるしブヨに刺されないと教えてくれた。「負うた子に浅瀬を教わる」ではないが、「土地の子供に教えられて、ブヨのまじないを知る」というものか。

これも土地の人に教えてもらったことだが、鬼怒川温泉で夕方、河原におりてハヤを釣っていると、アブが一ぴき顔のまわりにつきまとって、うるさくてたまらない。腰の手ぬぐいで追っ払っては釣っていると、今度は二ひきになり、三びきになり、またたくまに十ぴき以上にふえた。これはたまらん、釣りどころではないと、手ぬぐいで追いながら逃げにかかると、みるみるうちにアブの群れに取り囲まれて、あとにも先にも歩けたものではない。アブはうなりをあげて追ってくる。駆けるにも駆けられない。

河原のゴロタ石を、それこそ命からがら引きあげてきてわけを話すと、家の者も宿の者も窓からぼくの釣りを見ていたのだが、何で河原で手ぬぐいを振って踊りを踊っているのだろう、また例の悪ふざけが始まった、と思っていたという。