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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

線上閱讀三遊亭 金馬《江戸前の釣り(えどまえのつり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,910 字 · 214 頁

青空文庫

この釣りばかりは、寒ければ寒いほど釣れるという妙な釣りで、氷の上にいると、ときどきビリビリと大きな音がする。初めての人は氷が割れたのではないかと心配するが、土地の人は、氷がしまったという。夢に見てさえよいという富士を目の前に、あたり一面の銀世界、清浄感が、あたりを払っている。

強い風の日がある。氷の上にきた物売りが戦争未亡人だというので、ドブロクを買って札を渡すと、その札が風にさらわれて、どこかへ飛んで行ってしまった。渡したあとで、つり銭も受け取っていない。

「飛ばしたのはおまえのそそうだから捜してきな」

というと、しばらくして、

「どう捜してもわかりませんでした」

と、しおれて帰ってきた。

ほかの物売りがきたので、その話をすると、

「あの女、またそんなことをいっていましたか。いつでも、そういうウソばかりつくのです」

という。

「おれの見ている前で飛ばしたのだから確かだ」

「それで、どっちのほうへ飛んで行きましたか」

「札の行く先は見てなかったが、この紙の飛んで行くほうだ」

と、新聞紙を細かに切って飛ばしてやった。しばらくして、

「だんな、ありましたよ。この百円札でしょう」