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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

線上閱讀三遊亭 金馬《江戸前の釣り(えどまえのつり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,910 字 · 214 頁

青空文庫

しかもぼくの真正面。こちらを向いているカワウソの大きな目玉……。

小雨の降りそうな暗い夜に、薄ぼんやりした電灯の下で、からだ全体の毛穴が総毛立ち、目もくらみ、あやうく舟に倒れそうになったが、夢中で二本の釣り竿で水面をたたいた。カワウソのほうでも驚いたのだろう。水を切って、向こう岸へ泳いで行った。

ほっとひと息ついたぼくは、あわてて酒を飲み始めた。しかし今度は、酒のにおいをかいでカッパにでも出てこられてはたいへんである。

ところが、この怪談話はまだ続く。

気味が悪いが、真夜中で人を呼ぶこともできず、といって帰ることもできず、早く夜が明ければよいと考えながら、それでも二、三年ボラを五、六本釣ったのをコモの上に置いて、トモを向いて釣っていると、急に後ろの方でガタンゴトンという音。何だろうかと振り返ってみると、いつどこから出てきたのか大きな野ら猫が、ぼくの釣ったボラをくわえて、たんぼの中をずるずる引きずっている。そういえば、先刻から後ろのたんぼの中に何か動くものがある。葦もガサガサ音がしていたと思ってはいたが、深夜の川、後ろ一面たんぼの中で、猫にボラを取られるとは夢にも思わなかった。