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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
の背景に見るような廓の春を描き出すことになったのは、この物語の主人公が亡びてから二十年余の後であった。それでも春の夜はやはり賑わしかった。
そのぞめきの群れにまじって、次郎左衛門は仲の町を忍ぶように通った。八橋の予言ははずれて、彼は再び大門をくぐったのであった。しかも、なんの躊躇もせずに彼はまっすぐに立花屋の店先へずっとはいった。
「おや、佐野の大尽さま。お久し振りでござりました」
女房のお藤はいつもの通り愛想よく迎えた。次郎左衛門はもうこの茶屋に百両余りの借りが出来ていた。
「この頃はどうなされたかとお噂ばかり致しておりました。浮橋さんの噂では、ひょっとするとお国へお帰りなすったのかなど申しておりましたが、やはりまだ御逗留でござりましたか。八橋さんの花魁もさぞお待ちかねでござりましょう。まあどうぞお二階へ……」
「いや、急に暖かくなったせいか、駕籠にゆられてなんだか頭痛がする。少しここで休ませてもらおうか」
次郎左衛門は店さきの床几に腰をおろして、花暖簾を軽くなぶる夜風に吹かれていた。彼は女中が汲んで来た桜湯をうまそうに一杯飲んで、ゆったりした態度で往来の人を眺めていた。