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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

その晩は星の多い夜であった。仲の町の両側に隙き間もなく積み重ねられた真菰や蓮の葉には初秋の涼しい露が流れて、うるんだ鼠尾草のしょんぼりした花の上に、亡き魂の仮りの宿ともいいそうな小さい燈籠がうす暗い影を投げていた。綾衣は新造の綾鶴と禿の満野とを連れて、宵のうちに仲の町へ出た。その途中でかの夕雛に逢った。夕雛は起請を取りかわしている日本橋辺のあきんどの若い息子と、睦まじそうに手をひかれて歩いていた。綾衣も笑いながらその肩を叩いて行き違った。

京町の角は取り分けて賑わっていた。またその混雑を面白いことにして、わざと人を押して歩く浮かれた男たちも多かった。その中には喧嘩でも売りそうな生酔いもあった。生酔いの一人は綾衣の前に立ちふさがって、酒臭い息をふきながら穴の明くようにじっとその顔を覗き込んだ。こんな人も珍らしくない。綾衣も煩さそうに顔をそむけながら、角を右へ曲がろうとする出逢いがしらに、むこうから来た二人連れの侍に突き当らないばかりに摺れ合って行き違った。と思うと、彼女は不意に袖を掴まれてひと足よろけた。すれ違うはずみに綾衣の袖が一人の侍の刀の柄に引っかかって、中身は危うくするりと抜け出そうとしたのを、相手はあわてて押さえようとして、女の袖も一緒に掴んでしまったのであった。