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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

午飯を食ってしまっても何かぼんやりと考え暮らしていたが、やがて用人を呼びつけた。

「三左衛門。少し金子入用だが、知行所から取り立てる工夫はないか」

おととし以来、これは毎々のことであるので、用人も手強く断わった。

「いかにご自分の御知行所でも、さだめのほかに無体の御用金などけしからぬ儀でござります」

「では、蔵の中から不用の鎧兜太刀などを持ち出して、売り払ってはどうだ」

「鎧兜太刀などは武士の表道具、まして御先祖伝来の大切な品々、お前さまの御自由には相成りませぬ」

何を言っても取り合わないばかりか、あべこべに主人を遣り込めるような調子に、外記はむっとした。彼は黙って起ちあがって、床の間の鎧櫃から一領の鎧を引き摺り出して来た。

「これ、三左衛門。おれが今この鎧を持ち出して勝手に売り払ったらどうする」

三左衛門は形を改めて、唯今も申す通り、お前さまのお持ち物でもお前さまの御自由には相成りませぬと言い切った。その鎧は御先祖さまが慶長元和度々の戦場に敵の血をそそいだ名誉のお形見で、お家に取っては何物にも替え難い宝でござる。藤枝五百石のお家は、その鎧と太刀さきの賜物であるということをお忘れなされたかと、彼は叱るように言った。