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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

ひょっとすると、そこに林之助を見つけ出すかも知れないと思わないでもなかったが、お絹はそれよりもまずなんとなくお里の様子が見たかったのであった。見てどうするということもない。まさかに喧嘩を売るわけにもいかない。大儀な足を引き摺って長い橋を渡って、飲みたくもない茶を飲みに来たのは、自分ながら馬鹿ばかしいようにも思われた。お絹は列び茶屋や夜店の前を通りぬけて、広小路最寄りの小さい鰻屋の二階へあがった。

「もう気分はすっかりいいんですか」と、お君はまた訊いた。

「ああ、もう大丈夫だよ」

お君に酌をさせて、お絹は酒を飲んだ。酒は舌に苦いようで味がなかった。やっぱりからだがよくないのかしら――こう思うと、彼女はそぞろに寂しくなった。女が二十二にもなって、ほとんど人まじりも出来ないような、こんな稼業をしていて、末はどう成り行くことであろう。去年の冬、林之助と別れてから、お絹はめっきりと肉の衰えを感じるようになった。さっきのようなことがたびたび続いたら――と、彼女はうしろの壁に映る自分の痩せた影法師を思わず見返らねばならなかった。

燭台の蝋は音もせずに流れた。あしたの十五夜の用意であろう、小さい床の間にはひとたばの薄が生けてあって、そのほの白い花のかげには悲しい秋が忍んでいるように思われた。