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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
「しかし、向柳原まで来ちゃあ余程の廻り路になる。じゃあ、いっそわたしがお前の家まで送ってあげよう」と、林之助も見かねて言い出した。
お里も初めは辞退していたが、しまいには男の言うことをきいて、外神田の家まで送って貰うことになった。月はいよいよ冴え渡って、人通りの少ない夜の町をさまよっているたった二人の若い男と若い女をあざやかに照らした。ふたりの肌と肌は夜露にぬれて、冷たいままに寄り添ってあるいた。あるく道々で、お里は自分の身の上などを少しばかり話し出した。
お里は不二屋の娘ではなかった。不二屋の株を持っている婆さんはもう隠居して、日本橋の或る女が揚げ銭で店を借りている。お里はその女の遠縁に当るので、おととしの夏場から手伝いに頼まれて、外神田の自宅から毎晩かよっているが、内気の彼女は余りそんな稼業を好まない。自宅にはお徳という母があって、これも娘に浮いた稼業をさせることを好まないのであるが、幾らか稼いで貰わなければならない暮らしむきの都合もあるので、仕方がなしに娘を両国へ通わせている。七年前に死んだ惣領の息子が今まで達者でいたらとは、母が明け暮れに繰り返す愚痴であった。