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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

無論、屋敷の御用も忙がしかった。友達のつきあいもあった。しかし無理に遣り繰ればどうにか間のぬすめないこともなかった。

ひとにむかって何と上手に言い訳をしようとも、自分の心にむかっては立派に言い訳することができないような、うしろ暗い自分の行ないを林之助は自分で咎めた。

誰に水をさされたのか知らないが、お絹が飛んでもない疑いや妬みに心を狂わせるというのも、つまりは自分が無沙汰をかさねた結果である。世間には病気の女房をもっている夫もある。大あばたの女と仲よくしている男もある。うす気味の悪い蛇の眼を自分ばかりが恐れて嫌うのは間違っている。これからはまず自分の心を持ち直して、お絹のみだれ心を鎮める工夫をしなければならない。自分と、お絹と、蛇と、この三つは引き離すことの出来ない因果であると悟らなければならない。そうは思いきわめながらも、林之助がまつげの塵ともいうべきは、かのお里の初々しいおとなしやかな顔かたちであった。それがなんとなしに彼の目さきを暗くして、お絹一人を一心に見つめていようとする彼のひとみの邪魔をした。

屋敷の門前へ来て再び空を仰ぐと、月は遠い火の見櫓の上にかかって、その裾をひと刷毛なすったような白い雲の影が薄く流れていた。