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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

と、お若はお花のうしろ姿を見送って言った。

「へん、馬鹿にしていやあがる」と、豊吉は罵るように言った。「からだが拭きたけりゃ大川へでもぽんぽん飛び込むがいいや」

「でも、きょうは姐さんの代りを勤めているんだから、仕方がないさ」と、お若は妬ましそうに言った。

「姐さんはよっぽど悪いのかね」

林之助に訊かれて、お若はすぐにうなずいた。

「そりゃまったく悪いらしいんですよ。なんでもおとといの晩は大変にお酒を飲んで、夜風に吹かれてそこらを夜なかまでうろうろしていたんで、風邪を引いたらしいですよ」

「おとといの晩……」と、林之助はすこし考えた。「一体どこでそんなに飲んだんだろう」

ふだんからお花とは余り仲のよくないらしいお若は、この問いに対して無遠慮にべらべらしゃべった。なんでもおとといの晩、姐さんはお花に誘い出されて向島のある料理茶屋へ行った。そこで無暗に飲んで来たらしいと言った。

「お花が奢ったのかしら」

「どうですかねえ」と、お若は意味ありげに笑っていた。

お花がそんな所へ連れ出して奢る筈がない。客に連れられて行ったに相違ないということは、林之助にもすぐに判った。