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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
いろいろの買いがかりの勘定などをして歩くのもあった。それらの出這入りで京の町は又ひとしきり混雑した。
江戸に沢山の親類や縁者をもっていない半九郎は守り符や土産などを寄せ集めて歩く必要はなかったが、さすがに勤め向きの用事に追い廻されて祇園の酒に酔っている暇がなかった。市之助兄弟も忙がしい筈であった。しかも忙がしいことは弟に任せて、市之助は相変らず浮かれ歩いていた。
「もう二、三日で京も名残りだ。面白く騒げ、騒げ」
それは七日の宵で、きょうは朝から時雨れかかっている初冬の一日を、市之助は花菱の座敷で飲み明かしているのであった。日が暮れてから半九郎も来た。約束したのではない、偶然に落ち合ったのであった。
「おお、半九郎来たか」
「お身はいつから来ている」
「ゆうべから居つづけだ」と、市之助はもう他愛なく酔いくずれていた。
「弟にまた叱らるるぞ」と、半九郎はにが笑いした。
「あいつ、腹を立って、きっと兄の悪口をさんざんに言っているであろう。困った奴だ」
市之助も笑っていた。
四
半九郎を初めてここへ誘って来たのは市之助であったが、塒を一つ場所に決めていない彼はいつも半九郎の連れではなかった。