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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
それでも普段から自分の弟のように思っている源三郎に対して、今まで出来るだけの堪忍をしていたのであるが、眼の前で自分の女を手あらく投げられた、自分の膳を引っくり返された。彼はもう料簡が出来なくなって、大きい声で相手を叱りつけたのである。源三郎も行きがかりで彼に無礼を詫びようとはしなかった。
「はは、そのような嚇しを怖がる源三郎でない。夜昼となしに兄を誘い出して、あたら侍を腐らせた悪い友達に、何の科で詫びようか。江戸の侍の面汚しめ。そっちから詫びをせねば堪忍ならぬわ」
「なに、おのれはこの半九郎を江戸の侍の面汚しと言うたな。その子細を申せ」
「それを改めて問うことか。御用を怠って遊里に入りびたる奴、それが武士の手本になるか。武士の面汚しと申したに不思議があるか」
「武士の面汚し、相違ないな」
「おお、幾たびでも言って聞かせる。菊地半九郎は武士の面汚し、恥さらし、武士の風上には置かれぬ奴だ」
半九郎の眼の色は変った。
「おお、よく申した。おのれも武士に向ってそれほどのことを言うからは、相当の覚悟があろうな」
「念には及ばぬ。武士にはいつでも覚悟がある」
半九郎は刀をとって突っ立った。