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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

出るとやはり吉原が恋しくなった。

彼は大音寺前の細い路をつたって、堤の方へ暗いなかを急いで行った。

威勢のいい四手駕籠が次郎左衛門を追い越して飛んで行った。その提灯の灯が七、八間も行き過ぎたと思う頃に、足早に次郎左衛門の後をつけて来た者があった。と思うと、抜打ちの太刀風に彼は早くも身をかわした。武芸の心得のある彼は路ばたの立ち木をうしろにして、闇を睨んで叫んだ。

「人違いでございましょう」

まったく人違いであったのか、あるいはこっちに心得があると思ったためか、相手は無言で刃を引いて、もと来た方へ一散に駈けて行ってしまった。

九

次郎左衛門を驚かしたのは、そのころ折りおりに行なわれる辻斬りであった。意趣も遺恨もない通りがかりの人間を斬り倒して、刀の斬れ味を試すという乱暴な侍のいたずらであった。一刀で斬り損じるか、もしくは相手が少し手ごわいと見れば、すぐに刃を引いて逃げるのが彼等の習いであった、次郎左衛門もそれを知っていた。

「辻斬りか、栄之丞か」

彼は立ち停まって考えた。しかし場合が場合だけに、彼は栄之丞を疑った。うわべは素直に何もかも承知しておいて、あとから付けて来ておれを闇撃ちにする――どうもそれらしく思われてならなかった。