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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

いつもの通りに立花屋から送られて、彼は兵庫屋の客となった。その晩、座敷が引けてから次郎左衛門は八橋になにげなく訊いた。

「栄之丞さんはこの頃ちっとも見えないのか」

「ちっともたよりはありんせん」と、八橋は冷やかに答えた。

「なぜだろう」

「なぜか知りんせんが、あんな不実な人はどうなっても構いいせん」と、八橋はさらに罵るように言った。

親身の従弟と思えばこそ、自分もこれまでに随分面倒も見てやった。それにこの頃は何のたよりもしない、顔も見せない。あんな不人情な人はどうなっても構わない、一生逢わないでも構わないと、八橋はさもさも見限ったように言った。嘘とほんとうが半分ずつまじっているこの話を、次郎左衛門は一種の興味をもって聴いていた。

それからだんだん捜りを入れて見ると、八橋はまったく栄之丞に愛想をつかしているらしく思われた。あんな不実な奴はどうなっても構わないと、本当に思っているらしかった。

そこへ新造の浮橋が来て、今夜はどうして治六を連れて来ないかと訊いた。あいつは勘当したと次郎左衛門は正直に答えると、二人の女は黙って顔を見合せていた。治六の噂がいとぐちになって、又ぞろゆうべの身請けの話が出た。