輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

はたのてい

波多野邸

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《波多野邸(はたのてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,194 字 · 45 頁

青空文庫

師としての敬意以上に、なにか心の上の親しみまで感じていた。それが、文化研究所が出来てからは、断ち切られるような工合になった。吉村の方から研究所を訪れて来た。千枝子とも談話を交えた。然し彼は、千枝子の室には通らず、未亡人の室の方にばかり通った。そして次第に、千枝子は無視される地位に置かれた。こちらから吉村を訪問することも、なんとなく憚られる工合だった。

――どうしてこんな風になったのかしら。

感傷的にではなく、理知的に、彼女はぼんやり考え沈んだ。

室の正面には、多彩な政治家だった故人波多野氏の肖像画が掲げてあり、それと向いあって、孫中山の書がかかっており、一方の卓上には、画集や写真帖が置いてあり、他方の棚のケースには、銀製の種々の記念品や骨董品が並べてあり、煖炉棚には、古い壺や皿が飾られていて、その片端に、坐形の大きな人形が一つあった。足のところが少し損じてるきりで、顔から胴体まで、真白な泥土の肌は、光りを浮べて生々しく輝いていた。

その生々しい肌色に、千枝子は無心に眼を据えていたが、突然、その眼を大きく見開き、透き通るほどに頬を緊張さして、人形を見つめた。