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はたのてい

波多野邸

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《波多野邸(はたのてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,194 字 · 45 頁

青空文庫

「あれは知っている。わしのところへも何度か来た。」と高石老人は答えた。

その山口専次郎について、佐竹はおかしな話を伝えた。――数日前、山口は日本橋裏の或る酒場に行ったらしい。すると、ビール一杯も飲まないうちに、そこにいた四五名の酔っ払った無頼漢に取り囲まれて、喧嘩をふきかけられたが、彼はそれを巧みにあやなして、外に出たらしい。その酒場がどうやら、波多野洋介が経営してる店らしい。あのような無政府状態の店は、改良する必要がある……。

ただそれだけの、甚だ曖昧なそして簡単な話だったが、なにか割り切れない不純なものが感ぜられた。

高石老人は眉をひそめた。素知らぬ顔で碁に耽ってる洋介に呼びかけて、こういう噂があるがと、佐竹の話をはじめた。

洋介はそれを中途で遮って、ぼんやりした微笑を浮べて言った。

「あの時は僕もそこにいましたよ。よく知っています。」

「うむ、そこで、真相はどうなんだ。」

洋介はまた微笑した。

「もっとも、僕も少し酔っていました。山口は、たしかに、ビール一本飲みました。それでもう、金が無くなったかして、出て行ったようです。ばかばかしい話ですよ。第一あの店は僕がやってるのではなく、僕はただ客の一人にすぎません。