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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《泣虫小僧(なきむしこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,906 字 · 70 頁

青空文庫

「渋谷? よし来た。どこだって送ってってやるよ。どうせ昼間は遊びだもの……」

隆山は袂の底を小銭でちゃらちゃら音させながら、啓吉を連れて表通りへ出た。啓吉は、濡れた靴が気持ち悪かったが、四囲が爽かなので、じき忘れて歩いた。二人は電車通りにある一膳めし屋に這入った。まず壁に――朝飯定食八銭――と出ているのが啓吉に読めた。

「定食二人前くンなッ」

隆山が意勢よく呶鳴った。

その定食という奴が若布の味噌汁にうずら豆に新香と飯で、隆山は啓吉の飯を少しへずると、まるで馬のように音をたてて食べた。

「小僧! 美味か?」

「…………」

啓吉は只目で合点いた。合点きながら、返事をしいられる事が何となく厭だった。だが飯も味噌汁も啓吉には美味い。うずら豆の甘いのは、長い間甘いものを口にしない啓吉にとって、天国へ登るような美味さであった。

飯屋を出て、すぐ市電へ乗った。隆山は心のうちで尺八でも吹いているのか、こつりこつり首で拍手を取っている。

窓外を見ている啓吉の目の中に段々記憶のある町が走って来る。――渋谷の終点で降りると、隆山は陽向に目をしょぼしょぼさせて、

「じゃ、さよならするぜ。