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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《泣虫小僧(なきむしこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,906 字 · 70 頁

青空文庫

勘三は、「ああ吃驚した」といった顔つきで、腰を降ろしたが、

「沢崎さん、さっきの話、不快に思わないで下さい」

といった。沢崎といわれた女は、ニッコリして、

「まア、この方が、あのハンドバッグを拾って下さいましたの? よくお出来になるらしいのね」

と、自分の前にあった菓子を包んで、啓吉の汚れた手にそっと持たせてくれた。

二十五

沢崎という女のひとと別れて、勘三と二人で歩き出すと勘三は、

「あああ」

と溜息をついて、

「啓吉、いまの女のひと好きか?」

と、尋ねた。

「…………」

「どうだ、感じのいいひとだろう、ええ?」

「うん」

「叔母さんに、女のひとと歩いていたなンて、そんな事をいっちゃ駄目だよ」

「ああ」

啓吉は、菓子をくれた女のひとが、ハンドバッグをおとしたひとだったのだなと思った。非常に気取っているようなひとだと思った。勘三はまるで、浮腰のようなふわふわした歩き方をしていたが、不図、

「叔母さんへお使いで来たのかい?」

と尋ねた。お使いと尋ねられると、啓吉は九州へ行くといって学校へやって来た母親を想い出して、胸が痛くなった。白い手紙と五拾銭玉一ツ貰ったが、その白い手紙や五拾銭玉を貰ったために、母親とは一生逢えないような気がするのであった。