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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁

青空文庫

さすれば、上に述べた四・五世紀ころの状態として考えられるいろいろの事情は、そのすべてが神代の物語に反映しているといってもよい。こういう神代の物語によって、皇室をどこまでも皇室として永久にそれを続けてゆこう、またゆかねばならぬ、とする当時の、またそれにつづく時代の、朝廷に権力をもっているものの欲求と責任感とが、表現せられているのである。そうしてその根本は、皇位がこのころまで既に長くつづいて来たという事実にある。そういう事実があったればこそ、それを永久に続けようとする思想が生じたのである。神代の物語については、物語そのものよりもそういう物語を作り出した権力階級の思想に意味があり、そういう思想を生み出した歴史的事実としての政治‐社会的状態に一層大なる意味があることを、知らねばならぬ。

皇位が永久でありまたあらねばならぬ、という思想は、このようにして歴史的に養われまた固められて来たと考えられるが、この思想はこれから後ますます強められるのみであった。時勢は変り事態は変っても、上に挙げたいろいろの事情のうちの主なるものは、概していうと、いつもほぼ同じであった。