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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁

青空文庫

みずから政治をせられたならば、もっと現実的なことがらに主なる注意がむけられねばならなかったに違いないからである。

次には、皇室が文化の源泉であったという上代の状態が、中世ころまではつづいていたが、その後次第に変って来て、文化の中心が武士と寺院とに移り、そのはてには全く民間に帰してしまった、ということが考えられよう。国民の生活は変り文化は進んで来たが、皇室は生命を失った古い文化の遺風のうちにその存在をつづけていられたのである。皇室はこのようにして、実際政治から遠ざかった地位にいられると共に、文化の面においてもまた国民の生活から離れられることになった。ただこうなっても、皇室とその周囲とにそのなごりをとどめている古い文化のおもかげが知識人の尚古思想の対象となり、皇室が雲の上の高いところにあって一般人の生活と遠くかけはなれていることと相応じて、人々にそれに対する一種のゆかしさを感ぜしめ、なお政治的権力関係においては実権をもっているものに対して弱者の地位にあられることに誘われた同情の念と、朝廷の何ごとも昔に比べて衰えているという感じから来る一種の感傷とも、それを助けて、皇室を視るに一種の詩的感情を以てする傾向が知識人の間に生じた。