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ふどうするちか

浮動する地価

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《浮動する地価(ふどうするちか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,079 字 · 29 頁

青空文庫

そして残ったものは零である。

彼は、死んだ。その一生のつとめを終ってしまった樹木が、だん/\に、どこからともなく枯れかけて、如何なる手段を施しても、枯れるものを甦らすことは出来ないように死んでしまった。

土地も借金も同時になくなってしまったことを僕は喜んだ。せい/\とした。虹吉は、K市から帰って来た。

それからおふくろが死んだ。おふくろは、町にいる虹吉のことを、巡査が戸籍調べの振りをして、ちょい/\訊きに来るのを気に病んでいた。巡査は、虹吉のことだけを、根掘り葉掘り訊きたゞした。妻はあるか、何をしているか、そして、近々、帰っては来ないか。――近々帰っては来ないか? これだけは、いつ来ても訊くことを忘れなかった。

おふくろは、息子が泥棒でもやっているのではないか、そんな危惧をさえ抱かせられていた。

僕等は、さっぱりとした。田も、畠も、金も、係累もなくなってしまった。すきなところへとんで行けた。すきな事をやることが出来た。

トシエの親爺の伊三郎の所有地は、蓬や、秣草や、苫茅が生い茂って、誰れもかえり見る者もなかった。

僕と虹吉は、親爺が眠っている傍に持って行って、おふくろの遺骸を、埋めた。