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うきぐも

浮雲

二葉亭 四迷

線上閱讀二葉亭 四迷《浮雲(うきぐも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,980 字 · 222 頁

青空文庫

。お勢は笑い出しそうな眼元でじろり文三の顔を掠めながら、手ばしこく手で持っていた編物を奥座敷へ投入れ、何やらお鍋に云って笑いながら、面白そうに打連れて出て行った。主従とは云いながら、同程の年頃ゆえ、双方とも心持は朋友で、尤もこれは近頃こうなッたので、以前はお勢の心が高ぶっていたから、下女などには容易に言葉をもかけなかった。

出て行くお勢の後姿を目送って、文三は莞爾した。どうしてこう様子が渝ったのか、それを疑っているに遑なく、ただ何となく心嬉しくなって、莞爾した。それからは例の妄想が勃然と首を擡げて抑えても抑え切れぬようになり、種々の取留も無い事が続々胸に浮んで、遂には総てこの頃の事は皆文三の疑心から出た暗鬼で、実際はさして心配する程の事でも無かったかとまで思い込んだ。が、また心を取直して考えてみれば、故無くして文三を辱めたといい、母親に忤いながら、何時しかそのいうなりに成ったといい、それほどまで親かった昇と俄に疏々しくなったといい、――どうも常事でなくも思われる。と思えば、喜んで宜いものか、悲んで宜いものか、殆ど我にも胡乱になって来たので、あたかも遠方から撩る真似をされたように、思い切っては笑う事も出来ず、泣く事も出来ず、快と不快との間に心を迷せながら、暫く縁側を往きつ戻りつしていた。