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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁

青空文庫

全く、今では、両舷から、鯨油を流してさえいるくらいであったから。鯨油を流すことは、暴化もはなはだしくならないとやらないことであった。

尻屋の燈台はセンチメンタルにまたたく。日は暮れかけて、闇は、波と波との谷間から煙のように忍び出しては、白い波浪の飛沫に、け飛ばされていた。

舵手の小倉は、船首を風位から変えないように、そのあらゆる努力を傾注していた。彼の目はコンパスと、船の行方とを、機械的に注視していた。

と、本船の前左舷はるかな沖合に、一艘の汽船が見えた。「あ、汽船が!」と、小倉は無意識に叫んだ。

船長もチーフメートもだれもがブリッジの左舷へ集まって、望遠鏡のレンズを向けた。

この少し前から、ボートデッキで、サンパンの下にもぐり込んで仕事していた、水夫の波田芳夫というのも、今小倉が見つけたのを見つけて、一人でサンパンの下からながめていたのであった。

ブリッジでは望遠鏡があるために、その汽船は救助信号を掲げて、難破漂流しつつあるものであることがわかった。

ブリッジからは、直ちにエンジンへ向けて、フルスピードを命令した。一つ救助に出かけようというのであった。