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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁

青空文庫

その時の彼の努力は全くおびただしいものであった。彼は、用を達したあとは、疲労と疼痛とで失心したような状態に陥るのであった。

彼は、一切のことが、二度目であるというような幻覚にとらわれるのであった。それはちょうど、濁った方解石を透して物を見るように、一切がボンヤリして二重に見えるのであった。彼は、ズッと遠い以前からの歴史も、また、たった今何か考えた刹那的な考えも、二度目であるように思った。その一度は、どこで経験し、どこで考えたかということを、彼は考えさかのぼるのであった。そうして、そこには、彼の以前の生活があった。ひもじい、寒い小作人の子としての絶え間なき窮乏の生活が、それも二重の形をもって展開されるのであった。小学校時代の暑中休暇のことが、彼の今の負傷して寝ている状態と、ゴッチャになってしまったりするのだった。「ちょうどおれは二度目だ」と彼はぼんやりけがのことを考えているのであった。「おれはあの時、ほかのだれもが休んでいるのにおれだけは、父んと二人で田の草をとりに出かけたっけ。休まねばならぬ時に、おれは、煮えたぎる田の水の中で草とりをしたっけ。おれは休む時を持って生まれなかった。