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かいなんき
海難記
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《海難記(かいなんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,628 字 · 56 頁
舷が沈みすぎている。乗員が現在の三分の一ぐらいだったら、こんなに波をかぶらなくてもすむだろうと思うと、自分以外の存在が呪わしくなってきた。夜が明けると、いくらか海も穏やかになり、端艇は調子をとり戻して、昨日のように走りだしたが、この気持だけは消えずに、みなの心に淀み残った。
夜になるとまた逆風になった。あらしが来るらしく、遠い水平線のあたりで稲妻が閃いた。こんな状態であらしに逢ったら、ひとたまりもなかろうという病的な恐怖に襲われ、誰も彼も物凄い発揚状態になった。あらしの来る前に、出来るだけ端艇を軽くしておかなくてはならない。それで肥ったのや重そうなのが、まず狙われた。女でも容赦しなかった。近くにいるのが気をそろえて唐突に襲いかかり、捻り倒し、首を締めて海に投げた。なかには環境を理解して自分から海へ飛び込むものもあった。嵐のなかで陰気な水音がひびいた。端艇の指揮者は制止もせずに黙って見ていた。夜が明けるとどの端艇も乗員が半分になっていた。端艇の指揮者は、それでも朝の点呼をし、なに気ない顔で舟を走らせた。
エスピオ少尉が快走艇の乗員をひきとった途端、艀のなかに不穏な気勢がみなぎった。