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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
線上閱讀富田 常雄《消えた受賞作 直木賞編(しせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,806 字 · 36 頁
わし一人の余生すら、まっとうに見られないとは二十人に余る一族として、まことに情けなかった。それかあらぬか、週に二度ほど東京から通って来る執事の杉山に幾ら命じても、邸の修理をすべき職人は遂に来ず、杉山は圓月荘に伺候するのも全く、昔の恩義に対するサーヴィスで、自分も、この歳になりながら、禿頭の汗を拭きふき、主食や品物を担いで闇ブローカーをして居りますと愚痴を言った。
わしは不快であった。
併し、すべてが不快というのでもない。奈世を供にして海岸なぞへゆくと、挨拶してくれる者も居たし、海は変わりなく爽やかで、山の形も樹々の姿も、変わった人心とは違い、昔のままにわしを迎えてくれる。そして、奈世だけは、圓月荘に奉公に来てから、今まで、少しも変わらず、わしに仕えて居る。この若い娘が、この様に今も変わらないというのは不思議なくらいであった。
奈世が邸へ来たのは十四歳の時だったと思う。旧領地佐賀野の零落した酒づくりの娘で、礼儀作法も心得、品もよく、その顔だちも瓜実型の淋しいところはあったが、先ず何処と言って難のない美人といえる小娘であった。わしの夜伽をする様になったのは十七の時だったろうか。