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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
線上閱讀富田 常雄《消えた受賞作 直木賞編(しせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,806 字 · 36 頁
あの様な小僧を相手にするでもないが、態度が憎々しく非礼だったのが気に触わったというまでだ。杉山は承知の旨を答えたが、若者が出て行ったという報告は受けなかった。
五日ほどして、やはり、杉山が来ている夜であったが、奈世はわしの布団を敷き終え、わしが床に入るのを待って、次の間へ下がり自分の布団を敷いてから、
「お休みなさいませ」
と、両手を突き、何時もに変わらず言って、静かに襖をしめた。
朝になり、鉛色の光が雨戸から射す頃になると、わしは眼が醒める慣わしで、何時ものように小用に起ち、かえって、布団の上に坐ったが、今朝はどうしたことか、すぐ、気配で、わしの世話をするはずの奈世が起きて来る様子がなかった。寝すごしたのだろうと思い、わしは自分で煙草盆を引き寄せ、マッチで煙管に火を点け一二服吸い、咳き入ったが、その音でも奈世は起きて来ない。習慣で、わしは朝、床の上で昆布茶を喫むのだが、奈世が起きなくてはどうにもならぬ。
「奈世」
と、わしは呼んだ。
昆布茶のことなぞはわかりきった用で、呼ばれれば、慌てて、奈世が起きそうなのに、全く返事がなく、居る様な気配もしない。