輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁

青空文庫

それがいま掌に附着したのだった。自分は犯人でないことを知っているからいいが、もしやこれを他の人に見られたとなると、これは簡単には無罪を信じて貰えないことだと思った。僕は俄かに不安な気持に襲われた。

そのときのことである。ピイ、ピイ、ピイッと、鋭い笛の音が聞えた。ピイ、ピイ、ピイッと、しきりに反復しながらこっちへ近づいてくる様子である。それは確かに夜勤の警官たちが同僚の密行警官や刑事たちを呼びあつめるための呼笛だった。――それはますますこっちへ近づいてくる。もうすぐに、向うの小暗い辻から隼のように敏捷な警官隊が現われてくるだろうと思われた。

「これはいけない。……」

僕は慄然とした。先刻感じた不安がまた蘇ってきたのだった。こんな土地の警官に捕えられてはならない。しかも現在の立場は先刻よりも一層不利になっている。オーヴァその他は血に染んでいるし、ポケットにはこの事件の証拠物件が秘められている。しかも事件を感づいた警官隊は、もう身近かに迫っている。これで捕えられれば、四の五のはない。なにもかもお終いだ。

「脱走!」

そのときの僕の顔色は、紙のように褪せていたろうと思う。