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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁

青空文庫

「深夜の市長」が自らこの言葉を口にした! このルンペン老人の綽名は、やはり無意味ではなかったのだ。事情はよく分らないながら、彼と本物の市長との間には、とにかく一脈の縁の水路が続いていたのだった。――僕は跪いて「市長」の手を取ろうとすると、

「さあ行こう」

と、速水は僕の腕を抑えて引張った。

「でも、これじゃ『深夜の市長』を見殺しにするようじゃないかネ」

「仕方がない、後はお照に委せるんだ。躊躇している場合ではない」

後髪を引かれるような想いで、僕は速水と連れ立って、高塔を下りていった。階段を一つ下りるごとに、ズキンズキンと腰に痛みが響いた。しかし足を停めることは出来なかった。

「深夜の市長」が生命を賭けたT市の黄金の鍵のことを思えば……。

事務机の下を抜け、丸の内十三号館の窓を明けて、外へ出ようとすると、いきなり鼻先へパッと眩しい光線が爆発した。ハッと思って呼吸を停めたところへ、窓下から、

「試補さん、さあ私の手にお掴りなさい」

という声、よく見ると何のことだ。先刻この窓を攀じのぼるとき、お尻を持ち上げてもらった巡邏の警官だった。彼は今まで辛棒づよく、この窓下に待っていたものらしい。