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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《湯島詣(ゆしまもうで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 頁

青空文庫

三十三

蝶吉はその亡きお絹の引合せだと信じている梓に、いつの晩か手を開いて見せた。指の先が色に染まって、赤くなって血が浸んだようなのを怪んで聞くと、今日お墓参りをした時濡れ手で線香を持ったといって、

(私母さんと御膳を食べたのは生れてからたった一度なんですもの、)と縋り着いて泣いた。その手が冷たかったから、梓は思わず、しっかと胸に抱いたのである。

(お宗旨は何だ。)

(知りません。)

(問えば可いじゃあないか。)

(だって可笑しいわ。)

(じゃあ何てッて拝むんだな。)

(一生懸命に南無阿弥陀仏。)

この女が、この体で、この姿で、ただ一人墓の前に泣くのだと思って、梓は抱いたまま放さなかった。

三十三

「よ、どうしてそれが見棄てられるものか、まだその上に蝶吉は子供の時から、怨と、僻と憤とをもって見た世に対して、謂わば復讎的に己が腕で幾多遊冶郎を活殺して、その肉を啖い、その血を嘗むることをもって、精魂の痛苦を癒そうとしたが、あたかも母の死に逢って志を果さず、まだ一たびも男に向って、誑すの嬲るのというはもとより、お世辞一ツ言わずにいた身をもって、これを梓に献じたのである。譬えば、その家は壊たれ、その樹は伐られ、その海は干され、その山は崩され、その民は屠られ、その女は姦せられた亡国の公主にして、復讎の企図を懐いて、薪胆の苦を嘗め尽したの