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はなかみろうにん

濞かみ浪人

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《濞かみ浪人(はなかみろうにん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,425 字 · 39 頁

青空文庫

竹垣根

結句、あのほうが人間は気安いなあ』

かえって彼等は、数右衛門を羨しく思って寝た。

竹垣根

悶えがなければ数右衛門には恋がないのだ。然し、彼にはやはり彼なりの悶えがあった。その悶え方は、かえって、悲壮な顔や、憂鬱な眉のできる人間よりも、強いものかも知れなかった。

数右衛門のは、それがいきなり行動として出てしまうものだった。この三、四日は、多少むッつりしていたが、べつだんな様子もなかったのに、三十日が輿入と聞いた――その前夜の二十九日、真夜半だったが、何思ったか不意に蒲団を刎ね退けて、

『そうだ、お千賀どのの、心のほどは、誰にもわからぬ』

ぷいと、外へ飛出した。

もう門限で、藩邸は裏門ともに閉まっている。だが門番とは日頃仲がよいし、又彼は正直に、事情を訴えて頼んだので、門番もそっと隙を作ってくれた。

『夜明け前には帰る』

そこを出ると、数右衛門の跫は早かった。小山田の家は、そう広くもなく、勝手は充分知りぬいている。表は、門も塀もあったが寺隣りの庭の横に、竹垣根の一部があった。彼は難なくそこを越えて入った。

明日は花嫁として、他家へ輿入する女性の部屋へ、深夜、外部から戸をこじ開けて訪問するという事が、どんな非常識であり罪悪であるかを、彼は、そうふかく自分に咎めなかった。