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はなかみろうにん
濞かみ浪人
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《濞かみ浪人(はなかみろうにん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,425 字 · 39 頁
はははは』
闇を払うように、大きく笑ってから又、
『兄よりは、妹のほうがもう妙齢。これは盛りを過ぎてはいかぬ。虫のつかんうちに、子葉殿も、ひとつ心がけておいてくだされ』
と、真面目に云った。
『あのお千賀どのが、もうそんなお年頃かの』
『廿歳を一つ越えたがなあ』
と、一閑は舌打ちするように、嘆じて云う。
永代橋まで来ると、子葉は俳友の雪中庵が、風邪で寝ているので、見舞に立ち寄ると云って――別れ際に、
『数右衛門殿、ちょうど鉄砲洲への行き道故、御老人をお宅の側まで、送ってあげて下さらぬか』
云い残して、川筋へ曲がった。
数右衛門はちょっと気色に障った。別れたら独りで何処かで飲もうと胸算していた当てが外れたからである。
だが、一閑はさばけた老人だった。若い者のそういう顔色が疾く見えたのか何うか。
『まだ早い、ついでに拙宅へお寄りなさらんか。伜も好きな方じゃ、夜長に一献酌み交そうで』
と、云う。
寄ってもいいと考えていた。ところが、蠣浜橋の上まで来ると、足早に摺れ違った黒羽織の武家が、足を止めて、
『小山田の隠居か』
と、呼びかけた。
一閑が、何気なく、
『おう、誰か』