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ひとこおりのシャスタさん

火と氷のシャスタ山

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《火と氷のシャスタ山(ひとこおりのシャスタさん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,333 字 · 16 頁

青空文庫

私たち一行四人は、九月九日の夕、シッソンに着いて、駅前のパアク・ホテルというのに泊った、目ぼしい商家といっては、よろず屋風の荒物屋と、鍛冶屋があるくらいのもので、私は靴屋に案内してもらい、氷河に辷らない用心に、裏皮を貼りつけて、釘を打ってもらったが、旧式の轆轤を使って、靴屋のおやじが、シュッ、シュッと、線香花火式にやってくれた。登山の準備をしたくも、碌なものがないところで、この節の日本アルプスの登山口の、設備の方が、よほど行き届いているくらいだから、その貧弱さの、見当がつくであろう。

山麓帯の裾野で、日に焼けて、疲労をひどくしたくないので、定めの行程は短いにもかかわらず、翌十日は朝出立した、馬を五頭、一頭は荷物を積んで、案内者の、チャアルス・グーチという男が、裸馬に乗り、アルペン杖を横たえながら、片手で荷馬車を曳いて先登に立って行く。私は馬に慣れないので、少なからず閉口したが、同行中の神田憲君は、この仲間では馬術の達人で、ややともすれば遅れがちな私の馬の綱を、時々引いてくれた。

本街道から製材所の横を切れると、もう既に裾野であるが、富士のそれとは違って、乾き切った砂漠で、セージと通称する白ッ茶けた草や、マンザニタと呼ばれるところの、灌木などが茂って、馬蹄の砂が濛々と舞いあがるのには、馬上面を伏せて、眼