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えぼしだけのちょうじょう

烏帽子岳の頂上

窪田 空穂

線上閱讀窪田 空穂《烏帽子岳の頂上(えぼしだけのちょうじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,432 字 · 15 頁

青空文庫

「僕は……」と、横山君は若い顔に極り悪るそうな笑みを漲らして、拒絶の意を示した。

本居君はと見ると、何所へ行ったかもう見えなくなっていた。

私は一人で出懸けた。

露営地とそちらとのあいだには、岳樺の低い林があった。そのほうの傾斜の急な細路は、露にぬれた草で蔽われていた。林の下生えの草は、雨のあとのようだ。林を抜けると、すぐに山の脊梁である。おぼろげな、しかし間違わせない一すじの線が、眼をとめて見ると認められる。

脊梁のあちら側には、高山植物の密生した一区画がある。それは昨日見て、立ちどまって見たものである。丈の一二寸ほどの、檜葉のような葉をした木に、薄黄な花が、蕾は大きな雫のような、開いたのは桜のような形をした花が、一面に群らがって、そして露に濡れそぼっている。

その下には、昨日その一角を掠めて登って来た大崩れが、山腹が崩れて、山の腸ともいうべき岩の積み重ねの、乱雑に露出しているのが、真っ直というよりもむしろ、り込んだようになっているのが見おろされる。白い、茶の岩肌は、静かな、しかしそれぞれの光をあらわして、三百尺、五百尺と続いて、下は一つの色に煙っている。