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むめいさっかのにっき

無名作家の日記

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《無名作家の日記(むめいさっかのにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,441 字 · 43 頁

青空文庫

あの男は、ただ書いていさえすればそれで満足しておられるのかしら。

三月十五日。

雑誌「×××」の評判が、素晴らしくいい。ことに山野の「顔」の評判がいい。俺は、なるべく新聞の文芸欄を見まいとした。「×××」が評判されるのが、癪だからである。が、なんとなく「×××」の評判が気になって仕方がない。俺は、白状するが、もう三日ばかり、続けて図書館に通った。そっと「×××」の評判を読むためにである。最初にI新聞が、六号活字ではあったが、雑誌「×××」の創刊を祝福した。そして山野の「顔」を特に激賞した。が、そればかりではなかった。それから三日ばかりして、T新聞の文芸欄で、批評家H氏が山野の「顔」を激賞した。俺はそれを読んで、心の奥からこみ上げてくる嫉妬をどうすることもできなかった。とうとう、あいつに踏みにじられたと思った。俺は、この二、三年、憂慮していた運命が、もう的確に、実現するように思った。山野や桑田が文壇の花形として持てはやされ、俺が無名作家として、永久に葬られること、それはもう「×××」の発行で、早くも実現の第一段に到達したのだ。

俺は、山野の天分の力に、どうして対抗しようというのか。