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むざんやな

無惨やな

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《無惨やな(むざんやな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,601 字 · 16 頁

青空文庫

二

「それでは、あまり高望みか」

「いやいや、望みは大いなるに越したことなし……憚りながら、手前がお上なら、もうちっと上のことを望みまする」

「慾張者め、そちなら、なにを望む」

「播州姫路の松本明矩さま、このほどお国替になられるよし。姫路と申すは、厩橋などとはくらべものにならぬほどすぐれた国でございますから、ついでのことに、お所替をおねがい遊ばせ」

雅楽頭は膝を乗りだして、

「そうなるか」

「なりましょう」

「そう運べば、この上の倖せはない」

犬塚は自信ありげな面持で、

「幸い、御家老も詰めあって居られますことゆえ、彼とも申し談じ、思召しに叶うよう、相勤めましょう」

と、のみこんだようなことをいった。

二

雅楽頭の上願の筋は、柳営の内証向きで首尾よく裁許されたという噂だったが、五月の末、御老中御免のうえ、溜間詰に進み、あわせて厩橋から姫路へ所替を仰せつける旨、沙汰があった。

雅楽頭は喜悦満面のおもむきで、厩橋へ早馬をやって、城代、高須隼人、国家老、本多民部左衛門、川合蔵人、家老並、松平主水、以下用人、番頭、物頭を大手門先の上邸へ招集し、大広間で古事披露の祝宴を張り、宴半ばで、このたび一廉の働きをしたものども、本多民部左衛門、奉書目付岡田忠蔵以下に、それぞれ百五十石の加増をした。