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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《煩悩秘文書(ぼんのうひぶんしょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,705 字 · 173 頁

青空文庫

文珠屋佐吉だ。

かれ、三国ヶ嶽から下りて早朝に、藤屋へ宿をとったのだが、間もなく下座敷の侍の一行が、例のむすめを押し囲んでにわかに出発するもようなので、脱いだばかりの草鞋をすぐ穿き、ずっとおくれて後をつけて来たのだが。

驚いた。

尾けているのは、じぶんだけではない。

山上に利七と会っているはずの大次郎――七年会わないあいだに、すっかり江戸風の、立派な若ざむらいになった大次郎が、押っ取り刀で、見え隠れに一同の跡を踏んで行く。そして、ほかにも誰か人を求めているらしく、きょろきょろあたりを窺っていくようすなので、これには何かわけがありそう――見つけられては面白くないと、文珠屋佐吉、木の軒、草の深みを楯に、一行をつける大次郎を尾けて身を隠しながら、やっとこのお花畑まで来たので。

すると、この乱闘だ。

大次、いつの間にか腕を磨いて、おそろしい使い手になったものだ――と、われを忘れて見惚れていた文珠屋は、そのとき、わっと人声に気がつくと!

逃げ出したのだ、千浪が。

どういう隙があったのか、警戒の侍を振りほどいて、千浪が一散に駈け出している。

血なまぐさい光景に失神しそうなのだろう。