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ちちすぎやましげまるをかたる

父杉山茂丸を語る

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《父杉山茂丸を語る(ちちすぎやましげまるをかたる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,127 字 · 25 頁

青空文庫

直樹(私の旧名)は病身のおかげでアレだけ出来るのですから、なるべく学問から遠ざけて、身体を荒っぽく仕上げて下さい」

これにはお祖父様が不同意であったらしい。益々力を入れて八歳の時には弘道館述義と、詩経の一部と、易経の一部を教えて下すったものであるが、孝経は、どうしたものか教えて下さらなかった。

とはいえ私は十六七歳になってから、こうした父の言葉を痛切に感佩し、一も体力、二も体力と考えるようになった。さもなければ私は二十四五位で所謂、夭折というのをやっていたかも知れない。

因に弟の峻は、私が八歳の時に疫痢で死んだ。そのためであったろう。母は又、私の処に帰って来て、大きな乳を私に見せびらかすようになった。同時に私等は、宗像郡神与村の八並から筥崎へ移転して来た。

私が九歳の時、お祖父様、お祖母様、母、妹等は筥崎から父に従って上京し、麻布の笄町に住んだ。相当立派な家だったところを見ると、この頃からポツポツ父の社会的地位が出来かけていたものと見える。

父は京橋の本八丁堀に事務所を構え、ヨシ、ミノという二人の俥夫が引く二人引の俥で東京市中を馳けまわっていた。