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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁
その心苦しいなかには、何か明るい望が前の方にあることも、まだ若い筒井の眼に見えずにいられなかった。人はこういう中に倖せを求むべきであろうか、人は倖せになるために生きるものであろうか、人は決して倖せを避けて通る者ではない、花を見ないで道を通ることはできない。
「筒井殿、夥しい蛍を見られい。」
前の車のなかから貞時がこう呼ばわり、筒井は垂扉をあげてあおぎ見た川べりの草の上に、一面に光る蛍がちりばめた銀の縫いのようにひらめいていた。ここは大川にそそぐ幅広い流れの裾だった。車は馳り景は細かく移るごとに、変った岸べの蛍が先刻見た光とはべつなあたらしい光を点じ、そしてその幾つかは舞い上っていた。
「まあ、美ごとな蛍にございます。」
「我ら蛍の中を馳ってゆくようなものにござるぞ。」
前の車のなかの声は弾むような元気さで、声一杯に叫んだ。
「蛍はあなたさまによう見られたさに舞い上っております。あなたさまを蛍は好いているでございましょう。」
あとの女車の中の声が穏やかにそう答えた。そして前の車の中のこえは一層大きく、一層気負った調子でいった。
「そなたも蛍にどこか似た方のように思われるぞ。