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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁
しかし経之は母の前では、軽率にその名前を口にすることを控えた。もしその名前を指すことを一度でもそうしたら、それは母の眼の下を離れられないはぎ野であることを、注意ぶかく心にとめた。それに、はぎ野は母御の仕えだったのだ。
「経之。」
母御はあらためていった。
「こたび初めての庭わたりでないことを今から考えると、覚えがあります。」
「折々お見うけなされたか。」
「三たび四たびではないように覚えます。月のない夜がえらばれているようだ。」
母御はあれは町方から上った者だが、武家の者のように立居振舞が正しいといった。経之は、ただうなずいて見せた。去秋、町方から来て以来、過失もなく、どこかに聡明をかくれて持ったようだが、上べには、それが見られなかった。御達仲間のつきあいもよかった。ただ、そのきらびやかな顔立にあるものは、ことごとく危険なすぐ男の手にわたされるようなきらびやかさであり、それがはぎ野からいくら拭いても、拭ききれないものだった。恐らく、はぎ野の顔立ばかりでなくその心にも、そんな危険に類した浮いたようなものがあるのだろうと、経之はいった。彼女が先刻、白湯をはこんで来たときに、早くも瞼下のつかれをうすくはいだように見えていたことで分った。