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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁
女はものを考えてはならないとは誰でもいい得ないであろう。だが、橘は、ここまで来るとやはり一体自分はどうすればいいのであろう、二人とも逢わずにいた方がいいのか、何時までも門べに二人を通わしたままでいいのか、橘はここではじめて行きづまり、例の重たいものに靠れかかられるように身うごきならぬものを、自分のまわりに感じ出した。
移し植えたあやめはとうに花をちぢらせ、釣殿近く鶯の声が老いて行っても、二人の男は通いつづめた。父の基経は永い間、ほとんど耐えかねていたように、或る日、橘を呼んでいった。
「一人にきめてお逢いしたらどうか、こんなに見苦しく永い間二人で通うということは見ていても見づらいではないか。」
「一人にお逢いすれば一人がお可哀想でございます。ですから、お二人ともわたくしはお逢いいたしませぬ。」
「では何時までも通うてくるではないか。世間の聞えも悪い。」
「父上のよいお考えをお聞かせくださいませ。」
基経は何時かは茅原と猟夫が太刀を合わすようなことになりはしないかと、二人が狙い合っている呼吸づかいを感じずにいられなかった。行きついた果に僅かなはずみに刃を合わすようになることも、もう、眼に見えて迫っていた。