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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁
あのまま昂らせて置いたら、歯は一枚もなくなるまで噛み砕くだろう、何という、何という女だ、あの赤ん坊をまもるためには奴は何をするか判らない、袴野は生れてはじめて怖れというものを、間近の、寝床ではだらしのないすてから感じた。ばかばかしい事だがと袴野は気やすめに脅かしやがると思ってみたが、ばかばかしい事は決してばかばかしいものの正体ではなかった。
袴野はすぐ塞の横手で野伏ノ勝に行きあった。勝、この間から苦労をかけたな、行くぞ、彼はそういうと藤蔓を鞘のように巻いた山刀を、石の上でしごいて藤蔓を切り放った。そして白刃を勝の眼の前にのべた。お前も何か持てと、袴野は呶鳴った。勝は平然として言った。袴野どの、おれを斬ると仲間が割れる、いまは大事な時だぞ、焦るまいと言ったぎり、野伏ノ勝は去った。おれは早まった、眼がくらんでいるのだ、彼は塞にもどると、すての手当をし、口を拭き薬草を塗っていった。謝る、すて、おれが悪かったと彼はいい続けた。
数日後すては衆人の眼の前で、赤ん坊を抱いて、大胆に殆ど冷却しきった顔附で、山塞を去ろうとしかかった。袴野はいった。何処に行くのだ、彼女は言った。