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いぬとふえ

犬と笛

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《犬と笛(いぬとふえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,752 字 · 16 頁

青空文庫

」と言いました。

そこで木樵は、しばらく考えていましたが、

「私は犬が好きですから、どうか犬を一匹下さい。」と答えました。

すると、大男は笑いながら、

「高が犬を一匹くれなどとは、お前も余っ程欲のない男だ。しかしその欲のないのも感心だから、ほかにはまたとないような不思議な犬をくれてやろう。こう言う己は、葛城山の足一つの神だ。」と言って、一声高く口笛を鳴らしますと、森の奥から一匹の白犬が、落葉を蹴立てて駈けて来ました。

足一つの神はその犬を指して、

「これは名を嗅げと言って、どんな遠い所の事でも嗅ぎ出して来る利口な犬だ。では、一生己の代りに、大事に飼ってやってくれ。」と言うかと思うと、その姿は霧のように消えて、見えなくなってしまいました。

髪長彦は大喜びで、この白犬と一しょに里へ帰って来ましたが、あくる日また、山へ行って、何気なく笛を鳴らしていると、今度は黒い勾玉を首へかけた、手の一本しかない大男が、どこからか形を現して、

「きのう己の兄きの足一つの神が、お前に犬をやったそうだから、己も今日は礼をしようと思ってやって来た。何か欲しいものがあるのなら、遠慮なく言うが好い。